「ボランティア全国フォーラム2025」を開催しました!

2025年10月2日更新

【日 程】2025年9月24日(水)10:30~16:30

【会 場】 全国社会福祉協議会 会議室

※ 全体会のみオンライン配信あり

 

  わが国のボランティア・市民活動は、数多の大規模自然災害や、コロナ禍、世界規模の社会・経済状況の変動等に影響を受けつつ、対等であるべき行政との関係や、活動者自身のボランティアに対する考え方が変化してきています。

 「広がれボランティアの輪」連絡会議(以下、「広がれ」)は本年4月、ボランティア・市民活動が直面する課題について提言「ボランティアの今日的意義について、私たちは社会・市民に強く訴えます」を発表し、ともに考えようと社会に呼びかけました。

 本年度の全国フォーラムは、ボランティアを取り巻く現代社会の様相を踏まえ、私たちはどのような社会をめざして活動していくか改めて考え、ディスカッションする機会としました。会場参加のほかオンライン参加も含めて、100名を超えるボランティア・市民活動の実践者及び支援者等が集いました。


プログラム

10:30~10:40 開会あいさつ

10:40~12:30 全体会〈ティーチイン〉

12:30~13:30 休憩

13:30~15:45 分科会

15:45~16:00 休憩

16:00~16:30 全体振り返り・閉会


【午前の部】10:30~12:30

 「広がれ」会長である上野谷加代子氏からの開会挨拶ののち、全体会に移りました。 テーマは「ボランティアの課題とこれから ~「広がれ」の提言を通して考える~」として、上野谷会長と原田正樹副会長、5人の多様なボランティア・市民活動者及び支援者、そして進行役である田尻佳史常任幹事による、ティーチイン(討論会)が約2時間行われました。


全体会〈ティーチイン〉



  • テーマ: ボランティアの課題とこれから 〜「広がれ」の提言を通して考える〜
  • 趣旨: 現代のボランティア・市民活動は、その目的・内容・担い手・組織運営などさまざまな形で展開されています。行政との関係や地域とのつながり、メンバーシップなども多様です。それぞれの立場から「提言」を読み解き、立場や考え方の違いを共有しつつ、ボランティアを取り巻く課題を明確化し、これからの活動の方向性について考え対話する機会とします。
  • 登壇者:
    • 上野谷加代子さん(「広がれボランティアの輪」連絡会議会長/同志社大学名誉教授)
    • 原田正樹さん(「広がれボランティアの輪」連絡会議副会長/日本福祉大学学長)
    • 小山泰明さん(立川市社会福祉協議会 地域活動推進課 地域づくり係長)
    • 神元幸津江さん(全国災害ボランティア支援団体ネットワーク 事業部リーダー)
    • 根岸督和さん(あなたのいばしょ 理事長)
    • 柚口千佳さん(浦和トイライブラリーおもちゃ箱 代表)
    • 長福洋子さん(エフ・エー 理事・コーディネーター)
    • 進行(聞き手): 田尻佳史さん(「広がれボランティアの輪」連絡会議常任幹事/日本NPOセンター常務理事)
  • 提言「ボランティアの今日的意義について、私たちは社会・市民に強く訴えます」 (こちらをクリック)

 全体会の冒頭、原田副会長から提言の背景や内容について説明しました。背景には、行政施策の中でボランティア活動がいろいろな場面で期待される中、行政とボランティアとの対等性や、ボランティア自身の自発性など、これまでボランティア活動において大切にしてきた核となるものが変質してきているのではないか、という危機感が述べられました。

 上野谷会長から改めて、提言に込めたボランティア活動の核となる大切なこととして、「主体性」「対等性」「無償性」が挙げられました。この3つの核について、ボランティア・市民活動の実践者の立場からどのように考えるかを意見交換していきました。

 「主体性」については、「スタート時点で主体的とは言えなくても、活動する中で「主体性を育む」ことが大切」との意見や、「主体形成は、ボランティア活動の中でつくられていくもの。『私』という意思があるかを大切にすべき。」との意見が出されました。

 上野谷会長より「現時点では一番大事」と指摘された「対等性」については、「災害時の支援活動は行政が責任主体となる場面も多く、平時の活動と災害時を同等に議論することは難しいのでは」との指摘もありました。対等性については、行政とボランティアとの関係のほかに、ボランティアと利用者間、ボランティア同士の対等性も課題としてあります。ポイント制などが全国で導入されていますが、支援をする側と受ける側の対等性をどう実現するかという投げかけもありました。

 これは「無償性」の議論にもつながっていきます。ボランティア活動は無償性を原則としていますが、有償の活動をすべて否定するということではなく、「コミュニティサービス」※という考え方を広げていく必要があるのではないか、ということも提案されました。金銭を介在させるのであれば、活動者に還元するのではなく、ボランティア組織の運営や活動者の養成といった経費に充当することが妥当ではないか、といった意見も出されました。

 人口減少が続くわが国において、ボランティア活動者をどう増やしていくかも話題となりました。物価が高騰し、定年後も働く人が増えたり学生の貧困が課題となる中、社会貢献に関心が高い企業をいかに巻き込んでいくか、学生がボランティア活動できる環境をどう支援していくか、といった課題提起がなされました。また、ボランティアは、利用者と同じ立場、目線にあるという「市民性」が重要ではないか、企業の専門性に対して、アマチュアリズムを大事にしていくことが必要ではないか、との意見が出されました。

 最後に、田尻常任幹事より、ボランティア活動が歩んできた30年を振り返り、関係者が「協働」するだけではなく、これからは、ともにつくっていく「共創」が重要となると指摘するとともに、午後の分科会でも議論を続けることを依頼し、全体会を閉会しました。

 

※コミュニティサービスは、地域社会の構成員としての義務であり、地域をよくするために地域の中で役割を果たすこと。

 

 

【午後の部】13:30~16:30

 午後の部では、3分科会に分かれて議論を深めた後、全体でその内容を共有しました。

 

分科会Ⅰ


  • テーマ: 時代の変化のなかでぶれない軸を見つけよう ~ボランティアの自発性・主体性を守り、発展させるには~
  • 趣旨: 本来、ボランティア・市民活動は行政サービスを補う役割ではありませんが、実態として行政を補完するような動きもあり、行政との対等な関係構築の観点から懸念があります。時代の流れとともに変化する価値観や社会環境、法制度などに対応しつつ、ボランティアの今日的意義を改めて確認するうえで、ボランティアの基本原則である「主体的で自由な活動」を堅持するには何が求められるでしょうか。本分科会では、ボランティア・市民活動の推進・展開において「ぶれない軸」を確認し、参加者自身が日々の実践に参考になるようヒントを探ります。
  • コーディネーター: 森純一さん(東京ボランティア・市民活動センター副所長)
  • 登壇者: 
    • 青山織衣さん(大阪ボランティア協会 事務局主幹)
    • 小山泰明さん(立川市社会福祉協議会 地域活動推進課 地域づくり係長)
    • 神元幸津江さん(全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD) 事業部リーダー)

 分科会Ⅰでは、3人の登壇者から話題提供いただきました。立川市社協の小山さんからは、「スタートよりもゴール」として、最初は主体的でなくてもゴールでそれを大切にすることについて具体的に取り組んでいることのお話がありました。例えば、活動希望者や受け入れ先が単なるマンパワーのようにボランティアを考えているような相談が入った場合にも、オーダーメイドで一緒に活動内容を考えて、ボランティアとしての意味を確認しています。また、大学生から、ボランティアという言葉に対して「自分にはそんな難しいことはできない」といった声も出てくるなか、あえて「ボランティア」という言葉を使わない「Social Sketch Lab.」(ソーシャルスケッチラボ)という活動を通じて学生が社会をデザインする取り組みをすすめています。一方、立川市社協では2003年に「ボランティア・センター」から「市民活動センター」へ名前を変え、2020年に再度「ボランティア・市民活動センター」に名称を変更しています。「ボランティア」という言葉が市民に受入れられている現状もうかがえます。

 JVOADの神元さんからは、災害ボランティアの歴史を振り返ってもらいました。被災地支援にさまざまな専門性を持つ主体が登場するようになって情報共有会議が大切になり、さらに、連携・協働・コーディネーションを担う機能(=災害中間支援組織)が必要となっています。被災経験のない被災地では先が見通せず、しかし、目の前にいる被災者を助けるための効果的な支援を必要とするなか、災害ボランティアに専門性や支援のしくみが必要となっています。しかし、どうすれば災害関連死を減らせるか、どうすれば支援を届けられるかという想いを積み重ねてきた経験こそがその専門性といえます。行政との関係では、行政がすべきことまでボランティアが担うのではなく、行政がすべきことは行政がするということをきちんと訴えていくことが必要となっています。

 大阪ボランティア協会の青山さんからは、実践とともに、社会に伝えるべき課題を毎月のように研究し話し合う活動にも取り組んでいることをお話いただきました。そして、相談にあたって一人ひとりの「私」を大切にし、話をとことん聴き、一緒に育ちあうというボランティア観を大切にしているとのことでした。そうしたなかで生まれた取り組みの一つに「インクルーシブボランティア」があります。誰でもその人にあったやり方で参加できるよう、対話と調整のなかで場をつくっていく取り組みであることをご紹介いただきました。

 こうした3つの話題提供をもとに参加者で30分ほどグループディスカッションを行いました。午前中の全体会では「主体性」「無償性」「対等性」の3つのキーワードが出てきましたが、この第1分科会では3つの話題提供を通じて4つめのキーワードである、社会を変えていく「開拓性」がボランティアにとって大切であることも再確認できました。

 

分科会Ⅱ


  • テーマ: ボランティア参加の入り口が多様化するなか、継続的な「担い手」を増やしていくには? 
  • 趣旨: 学校教育、企業のCSR、スポーツイベントの運営、SNSでの情報発信など、ボランティア活動に参加するきっかけは多様化している一方で、多くのボランティア・市民活動団体が担い手不足という悩みを抱えています。この分科会では、先進的な取り組みをされている事例を学ぶことを通して、ボランティア・市民活動に参加する人を増やし、継続的な担い手になってもらうためにはどうしたらいいかを考え、話し合う場を提供します。
  • コーディネーター: 秋貞由美子さん(中央共同募金会 事務局長/広報・募金推進室長)、伊藤章さん(ボランティア活動推進国際協議会日本(JAVE) 理事長)
  • 登壇者: 
    • 園部さやかさん(日本財団ボランティアセンター 事業部マネージャー)
    • 根岸督和さん(あなたのいばしょ 理事長)
    • 山﨑智文さん(京都産業大学ボランティアセンター コーディネーター)

 分科会Ⅱでは、「ボランティア参加の入口を増やす」と「ボランティアを継続・定着させる」という2つのポイントについて事例を学び、参加者で話し合いました。

 入口を増やすという点では、日本財団ボランティアセンターが「ぼ活!」というボランティアと活動とをマッチングするプラットフォームを運営されたり、「旅するボランティア」という旅行ついでに活動もするプログラムを提供されたりしています。京都産業大学ボランティアセンターでは一日体験ボランティアを行っており(引率も学生スタッフ)、「就職活動のためにも一度は参加しておきたい」と考える学生が多く参加しています。また、あなたのいばしょの「一カ月に4時間活動してください」というメッセージのように訴求ポイントが明確なのも効果的でしょう。

 継続・定着に関しては、あなたのいばしょが定期的にボランティアのための交流会を実施したり、その活動の社会的価値を発信したりといった工夫をされていました。

 まとめると、ボランティアの主体性は放っておいても生まれないので、垣根を低くして間口を広くする入り口を用意するとともに、そのあとのフォローを丁寧にすることが重要です。

ほかにも、「安心・安全な場」「めざすところを最初に説明する」「ボランティアからの提案を迅速に反映する」といったアイデアが出されました。

 

分科会Ⅲ


  • テーマ: ボランティア・市民活動団体に世代交代は必要なの!? ~団体の継続や発展、あるいは縮小への転機を考える~
  • 趣旨: いま地域にはさまざまな課題が山積しています。これまでも身近なニーズに気づいた市民たちが自発的に活動をはじめ、全国でたくさんのボランティアグループや市民活動団体の活動が展開されています。しかし、社会のニーズはより深刻に、複合的になっており、従来の活動では対応できない場面が増えたり、メンバーの高齢化や固定化で活動を維持できない悩みに直面している団体もあります。この分科会では、活動を続けるなかで遭遇する団体のさまざまな転機(組織や事業の継続、拡大、縮小)に焦点をあて、具体的な事例を紹介しながら、ボランティア・市民活動団体の変容について考えます。
  • コーディネーター: 後藤麻理子さん(日本ボランティアコーディネーター協会理事・事務局長)
  • コメンテーター: 鈴木訪子さん(おもちゃの図書館全国連絡会理事長)
  • 登壇者: 
    • 柚口千佳さん(浦和トイライブラリーおもちゃ箱 代表)
    • 長福洋子さん(エフ・エー 理事・コーディネーター)

 分科会Ⅲでは、「ボランティア・市民活動団体に世代交代は必要なの!? ~団体の継続や発展、あるいは縮小への転機を考える」をテーマに、二つの実践団体より事例報告がありました。

 最初は、柚口さんが5代目代表を務める浦和トイライブラリーおもちゃ箱。障害のある子どもたちの遊びの場をつくりたいという思いからスタートした、ボランティアで運営する団体です。時代とともに、子どもをとりまく環境の変化によるニーズの変化やさまざまなボランティアの受け入れに応じるめために、新たな活動をつくり出してきました。スタート時から途切れなく毎月広報誌を出し続け、活動を「見える化」することや、代表ひとりで背負いこまないように役割分担をしてきたことが継続の力となっています。

 長福さんが理事長を務めるNPO法人エフ・エーは、PTAの仲間たちとの助け合いの学習から生まれた団体であり、日々の暮らしを支えることをめざし有償在宅福祉事業や介護保険事業に取り組んできました。また、活動の原点ともなる誰もが立ち寄れるホッとできる居場所の取り組みなど、地域になくてはならない活動に成長しました。一方で、活動開始から30年を経て、担い手が集まらないなどの課題から介護・有償在宅の事業を閉じることを決めました。今まで取り組んできた自主性を大切にした温かな交流のあるネットワークをもとに、居場所機能を存続させる形で、子育て支援の団体に拠点の引き継ぎを準備中です。

 二つの事例報告を受け、参加者は5つのグループに分かれ、活動を続けるなかで遭遇する団体のさまざまな転機(組織や事業の継続、拡大、縮小)に焦点をあてて議論しました。「活動の担い手に若い世代が少ない」「会場の確保ができにくい」「次世代を育てるために」などの課題が出されました。若い世代に参加のきっかけをつくるためにも、企業との連携や、社協がつなぎ役となり活動を支援するなど、さまざまな団体、機関等の連携が大事だと再認識する分科会となりました。

 

全体振り返り・閉会


 分科会修了後全体会に戻り、午後の部の振り返りを行いました。

 各分科会から協議概要の報告がなされたのち、原田正樹副会長より「ボランティアの原点とは何か、改めて考える場を広げていきたい」「ボランティアはしなやかに、したたかに変化していく必要があるが、大事なスピリッツは失ってはいけない」とのコメントがあり、閉会しました。


資料

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